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04
 
 昨日はサークルの同期1名と中野で遊んできた。中野に行くのは2年前スピンギアというヨーヨー専門店で高校の友達数人と一緒にかっこいいハイパーヨーヨーを購入して以来である。

 夜の中野はブロードウェイを少し脇に逸れた瞬間からすぐさま漂ってくる場末感が非常に居心地よく、僕らは胸の高鳴りを抑え切れないまま目当てとしている店に向かって歩みを進めていた。

 その店というのはメイドさんとニャンニャンでルンルンな会話を楽しみながら飲食を楽しむことができる夜のお店で、所謂メイドカフェの派生系の1つであった。同期は以前1度この店に行ったことがあるようで度々話を聞いていたので、僕は是非とも一度行ってみたいと思っていた。30分で1000円、高いと思うか安いと思うかは自分次第である。

 金を払い接客として女の子に話してもらえば、きっと会話は弾んで楽しいだろうし時には優しくしてくれるかもしれない。そうして浮き彫りになった自分の男としての惨めさに安いセンチメンタルを感じて、死にたくなってみたかったのであった。

 そうしてついに足を運んだ夜のメイドカフェ、「お帰りなさいませ」とのテンプレートそのままな台詞で主人を迎える彼女達にワクワクしながら「ただいま」と応答してカウンター席に着くと、早速僕ら専用のメイドが配属された。なんともかわいらしい。

「にゃんぱ~い」

 全員分の飲み物が用意されると、メイドはグラスを手に取ってそのような呪文を口に出した。どうやらこの国では乾杯のことをそう言うらしい。郷に入っては郷に従えということで、僕も威勢よく「にゃんぱい!」と叫んでみたはいいものの、さてさて早速話すことが何も無くなった。最早会話する以前から死にたくなっている。それでもなんとか空虚に言葉を発して会話を成立させようと試みているうちに、段々いいような悪いような空気になってきてメイドも調子に乗り始めた。

「ご主人様たち、草食系っぽいですよね!私草食系の人好きですよ、肉食系とかムリムリ!(笑)」

 はあなんなんだこいつ、これだから女は。「いやーそうですか、俺たち意外とモテますかねえ!」などと威勢よく返事してみるものの、メイドの女の子は「大学の男の子達、肉食系ばっかりで本当だめなんですよ」「草食系というか、もはや草みたいな人っているじゃないですか」などと自身の男性に対する好みを語り始める。

 うるせえ黙ってろ!!大人しく俺達に優しくしてろよこのクソアマ!!!そう思ったのもつかの間、メイドは僕らにとどめの一言を突きつけてきた。

「ご主人様たち、あまり目を合わせてくれないですよね・・・特に右の方・・・(僕のほうを見ながら)」

 うっ・・・

 その言葉はナイフのように僕の心に突き刺さり、己の惨めさから湧き出るセンチメンタルは確かにそこに存在を表出していた。メイドに優しくしてもらう事により生じるはずであったそれは本来の想定とはかけ離れていたけれども、僕は確かにここで目的を達成し満足することができたのだった。

 丁度時間になったので、僕らは延長することはせずに彼女らの「行ってらっしゃいませ」の声を聞き届けて退出した。場末の夜はさっきと変わらずに僕らを暖かく迎えてくれて、僕らはその空気に酩酊しながら、彼女に付けられた傷を抱えて次の店へと身を投じるのであった。

 きっとまた来るよ。そうして次こそは君の目を見て、グラスを手にとり僕のほうからあの時言えなかった台詞を言うんだ。

「惨敗」
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